演目と配役
幸せを運ぶ“こうのとり”を題材にした、優美な舞踊劇
時は室町時代。但馬の国、出石神社の社頭では、足利将軍をもしのぐ権勢を誇る守護大名・赤松満祐の天下掌握を祈願する宴が開かれ、神の使いとされる霊鳥“こうのとり”が生贄として献上されています。その肉を食べると長寿を得るという伝説にならい、家臣たちが、まだ子どものこうのとりを満祐に差し出そうとすると、突如として二人の狂言師が現れます。舞い踊る二人はやがて…。
古来より幸せを運ぶとされる“こうのとり” は国の特別天然記念物であり、兵庫県の県鳥にも指定されています。 “こうのとり”の親子を主人公に、舞踊劇仕立てに構成した本作は、現存する近畿地方最古の芝居小屋・出石永楽館(兵庫県豊岡市)で、外題に『神の鳥』の当て字をつけ、平成26(2014)年に初演されました。明快な筋立てと、錦絵のように華やかな舞台面、また、ぶっ返りや早替りなど、歌舞伎の醍醐味をふんだんに取り入れた演出がみどころで、このたびは、さらに内容を充実させ、歌舞伎座版としてお楽しみいただきます。
狂言師右近実はこうのとり(雄鳥)/山中鹿之介幸盛 |
愛之助 |
狂言師左近実はこうのとり(雌鳥) |
壱太郎 |
仁木入道 |
種之助 |
傾城柏木 |
吉 弥 |
赤松満祐 |
東 蔵 |
北條秀司 作・演出
二、井伊大老(いいたいろう)
千駄ヶ谷井伊家下屋敷の場
国難に立ち向かった大老・井伊直弼を、新たな視点で描き出した名作
幕末、長年の鎖国政策からの転換を迫られ、国中が揺れていた激動の時代。この前代未聞の国難に対し、大老・井伊直弼は強い意志を持って立ち向かいます。しかし、その独裁的なやり方は反対派から激しい非難を浴び、暗殺の危機にさらされていました。
雛祭りの前夜。千駄ヶ谷にある井伊家の下屋敷では、お静の方が娘の菩提を弔っています。旧知の仲の仙英禅師と昔を懐かしんでいると、仙英が直弼の書いた和歌に気づき、その死期が近いことを悟ります。やがて直弼が現れ、お静とともに桃の節句の宴を始めます。しんしんと春の雪が降るなか、二人は酒を酌み交わし、心を通わせ…。
昭和を代表する劇作家・北條秀司が新国劇に書き下ろした台本に自ら手を加え、昭和31(1956)年に歌舞伎として初演。大老・井伊直弼が桜田門外で暗殺される前夜の様子を叙情豊かに描き出した名作です。豪華な雛飾りの前で自らの苦悩を吐露する直弼と、直弼を支え続けたお静とのやり取りには情愛が滲み、胸に沁み入ります。新たな視点で井伊直弼の人間性を浮き彫りにした、味わい深い舞台をご堪能ください。
井伊直弼 |
白 鸚 |
仙英禅師 |
歌 六 |
老女雲の井 |
高麗蔵 |
お静の方 |
魁 春 |
十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言
一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
江戸歌舞伎の様式美あふれるひと幕で、名優を偲ぶ
工藤祐経の館では、名誉ある富士の巻狩りの総奉行に任じられた工藤が祝宴を催し、大名たちが招かれ居並んでいます。そこへ、小林朝比奈の手引きにより工藤への対面が許されたのは、曽我十郎と五郎の兄弟。二人の父親は18年前に工藤の不意打ちにより落命。その仇を討とうとはやる五郎は、工藤に詰め寄りますが…。
「曽我兄弟の仇討ち」は、父の敵である工藤を討ち取りながらも若くして散った兄弟の死を悼み、中世以降、広く愛され、さまざまな「曽我もの」の作品が上演されました。そのなかで『寿曽我対面』は歌舞伎の多彩な役柄がそろう、顔見世に相応しい豪華なひと幕です。当月は「十世坂東三津五郎七回忌追善狂言」として上演します。十世三津五郎が平成13(2001)年の三津五郎襲名披露で曽我五郎を勤めたゆかりの狂言で名優を偲びます。祝祭劇としての儀式性と、歌舞伎の様式美が凝縮された舞台にご期待ください。
工藤左衛門祐経 |
菊五郎 |
曽我五郎時致 |
巳之助 |
曽我十郎祐成 |
時 蔵 |
小林朝比奈 |
松 緑 |
八幡三郎 |
彦三郎 |
梶原平次景高 |
坂東亀蔵 |
化粧坂少将 |
梅 枝 |
秦野四郎 |
萬太郎 |
近江小藤太 |
権十郎 |
梶原平三景時 |
團 蔵 |
大磯の虎 |
雀右衛門 |
鬼王新左衛門 |
左團次 |
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後見 |
秀 調 |
華やかで勇壮な歌舞伎舞踊の代表作
ここは天竺の清涼山。文殊菩薩が住むという霊地の、その麓には神仏の力により出現したという石橋。そこへ狂言師の右近と左近が手獅子を携えやってくると、石橋の由来に、文殊菩薩の使いである霊獣の獅子は仔獅子を谷底へと蹴落とし、自力で這い上がってきた子だけを育てるという故事を見せます。やがて満開の牡丹の花に戯れ遊び、親獅子の精と仔獅子の精が現れると…。
前半は、厳しくも温かい親獅子の情愛や谷を這い上がる子のけなげさ、親子の感動的な再会が描かれます。ユーモラスな間狂言である「宗論」をはさんで、後半は白毛の親獅子の精と赤毛の仔獅子の精が登場し、勇壮かつ華麗な毛振りを披露します。能「石橋」をもとに、能舞台を模した松羽目を背景とした歌舞伎舞踊の代表作。前シテと後シテそれぞれにみどころにあふれ、人気の高い長唄の舞踊をご堪能ください。
狂言師右近後に親獅子の精 |
仁左衛門 |
狂言師左近後に仔獅子の精 |
千之助 |
浄土僧専念 |
門之助 |
法華僧日門 |
又五郎 |
戸部和久 補綴
石川耕士 構成・演出
市川猿之助 演出
花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)
序幕 第一場 鶴ヶ岡八幡社頭の場
第二場 桃井館奥書院の場
第三場 稲瀬川々端の場
第四場 芸州侯下屋敷の場
第五場 同 門外の場
大詰 第一場 槌谷邸奥座敷の場
第二場 高家奥庭泉水の場
第三場 元の槌谷邸の場
第四場 花水橋引揚げの場
名場面が凝縮された「忠臣蔵」の世界を、新たな演出で魅せる
鎌倉は鶴ヶ岡八幡宮。足利直義を筆頭に、饗応役の塩冶判官、桃井若狭之助が居並ぶなか、兜の鑑定役として呼び出された判官の妻・顔世御前に横恋慕する執権・高師直が顔世にしつこく言い寄ります。そこへ助けに入り顔世を逃がした若狭之助でしたが、気分を害した師直から散々に侮辱されると、耐えかねて刀を抜き…というのは若狭之助が見た夢。現実の世界では、師直に侮辱された塩冶判官が刃傷に及び切腹して1年、大星由良之助をはじめとする塩冶浪士たちはそれぞれの物語を生き、ついに討ち入りの刻が迫ります…。
元禄年間に起きた赤穂浪士の討ち入り事件を題材とした『仮名手本忠臣蔵』は、歌舞伎の三大名作狂言の一つとして、時代とともに人々の心を惹きつけてきました。また、討ち入りに関わる人物を、さまざまな視点からドラマチックに描き出した「忠臣蔵もの」も今日まで数多く創作されています。このたびの上演では、『仮名手本忠臣蔵』の「大序」の世界で幕を開け、小浪と力弥の縁組みに若狭之助が心を砕く「桃井館」、おなじみ「徳利の別れ」を題材にした「稲瀬川々端」へと続きます。さらに、亡き主君の奥方との涙の別れを描いた「南部坂雪の別れ」、討ち入り当日の吉良邸隣家の物語『土屋主税』を『仮名手本』の世界に置き換え、クライマックスは十一段目より「高家奥庭泉水」、「花水橋引揚げ」とそれぞれの名場面をスピーディーな展開でお見せする新たな演出で上演いたします。顔見世月の歌舞伎座、花形俳優の競演で挑む「忠臣蔵」の世界にどうぞご期待ください。
顔世御前後に葉泉院/大鷲文吾 |
尾上右近 |
河瀬六弥 |
歌之助 |
源蔵姉おさみ |
笑 也 |
高師直/戸田の局/河雲松柳亭 |
猿之助 |
晋其角 |
猿 弥 |
大星由良之助 |
歌 昇 |
井浪伴左衛門 |
錦 吾 |
桃井若狭之助/清水大学 |
幸四郎 |
足利直義/お園 |
新 悟 |
寺岡平右衛門 |
宗之助 |
大星力弥 |
鷹之資 |
塩冶判官/槌谷主税 |
隼 人 |
龍田新左衛門 |
廣太郎 |
赤垣源蔵 |
中村福之助 |
小浪 |
米 吉 |
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(五十音順) |