演目と配役
安田蛙文 作
中田万助 作
奈河彰輔 演出
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言
雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
市川團十郎五役並びに空中浮遊相勤め申し候
時は平安時代のはじめ。帝には早雲王子という後継者がいましたが、陰陽師の安倍清行は、早雲王子が帝位につくと世が乱れると予言します。そこで帝は高僧鳴神上人に「変成男子(へんじょうなんし)」の行法を命じ、妃が身ごもった女子を男子に変え、世継ぎを誕生させます。帝位継承の望みを絶たれた早雲王子は天下を覆す機会を狙い、鳴神上人を都から追放。しかし、この企みにより朝廷に恨みを抱いた鳴神上人が、京都北山の滝壺に龍神を封じ込めると、都は日照りとなって人々は旱魃(かんばつ)に苦しみ朝廷を悩ませます。文屋豊秀の家臣である粂寺弾正は、雨乞いに効力のある小野春道家の重宝「ことわりや」の短冊の行方を詮議しに、小野春道の館にやってきますが、そこで、春道の息女であり、豊秀の許嫁の錦の前の奇病を見事解決するのでした。
一方、豊秀は雲の絶間姫からの申し出を聞き入れ、鳴神上人の行法を破るための朝廷の使者として、絶間姫を鳴神上人のもとに遣わします。絶間姫は、酒色を用いて鳴神上人から行法の秘密を聞き出すと、龍神を解き放ち、ついに都に雨が降り出します。だまされたと知った上人は怒りに荒れ狂い、姫の後を追って行くのでした。こうして、早雲王子の悪事がことごとく露見。ここへ不動明王が降臨し…。
二世市川團十郎により約280年前に大坂で初演された本作は、歌舞伎十八番の『毛抜』、『鳴神』、『不動』の3作品が含まれる成田屋所縁の通し狂言で、團十郎が海老蔵時代の平成20(2008)年に新たな構想と脚本にて上演しました。天下を掌握しようという悪人や、これを防ごうとする善人など、主要な5役を團十郎が勤め、縦横無尽に活躍する勧善懲悪の物語に、豪快な荒事、早替りや空中浮遊と、歌舞伎の魅力にあふれる舞台を、襲名披露狂言ならではの華やかな顔ぶれによりご堪能ください。
鳴神上人 |
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粂寺弾正 |
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早雲王子 |
海老蔵改め團十郎 |
安倍清行 |
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不動明王 |
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文屋豊秀 |
幸四郎 |
八剣玄蕃 |
右團次 |
秦民部 |
男女蔵 |
秦秀太郎 |
児太郎 |
小野春風 |
廣松 |
矜羯羅童子 |
男 寅 |
八剣数馬/制多迦童子 |
虎之介 |
錦の前 |
莟 玉 |
黒雲坊 |
九團次 |
白雲坊 |
市 蔵 |
腰元巻絹 |
扇 雀 |
小原万兵衛実は石原瀬平 |
鴈治郎 |
雲の絶間姫 |
雀右衛門 |
小野春道 |
梅 玉 |
兄頼朝から謀反の疑いをかけられ都落ちしようとする源義経一行のもとに、愛妾の静御前がやってきます。義経は静の同道を許さず、“初音の鼓”を自らの形見にと預けます。一人残され追手に捕らわれそうになった静は、家臣の佐藤忠信に助けられます。義経から静の守護を頼まれた忠信ですが、その姿はどこか不思議な雰囲気を漂わせるのでした。
三大名作の『義経千本桜』より、狐忠信が活躍する、様式美に満ちたひと幕をお楽しみください。
佐藤忠信実は源九郎狐 |
右團次 |
武蔵坊弁慶 |
九團次 |
逸見藤太 |
廣太郎 |
亀井六郎 |
男 寅 |
駿河次郎 |
玉太郎 |
源義経 |
廣 松 |
静御前 |
児太郎 |
二、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
奥殿
平家全盛の時代、かつて源義朝の妻であった常盤御前を妻に迎えた一條大蔵卿ですが、能狂言にうつつをぬかす阿呆と噂されています。義朝の忠臣である吉岡鬼次郎と妻のお京は、常盤の本心を探ろうと大蔵卿の館に潜り込みますが、源氏再興の思いをなくした様子で楊弓遊びに興じる常盤。堪えかねた鬼次郎が意見すると、実はその矢は平家調伏の願がかけられたものでした。そこへ、常の様子とは異なる威厳にあふれた大蔵卿が現れ…。
密かに源氏に心を寄せる大蔵卿の作り阿呆と颯爽とした本性の二面性が魅力的に描き出される、義太夫狂言の名作をご堪能ください。
一條大蔵長成 |
幸四郎 |
吉岡鬼次郎 |
鴈治郎 |
女房鳴瀬 |
高麗蔵 |
八剣勘解由 |
錦 吾 |
女房お京 |
孝太郎 |
常盤御前 |
雀右衛門 |
十三代目市川團十郎白猿
三、八代目市川新之助 襲名披露 口上(こうじょう)
舞台上に裃姿の俳優がそろい、一人ひとりよりお祝いの口上が述べられます。十三代目市川團十郎、八代目市川新之助からは、ご来場の皆様へ、このたびの襲名披露のご挨拶を申し上げます。華やかなひと幕をお楽しみください。
文殊菩薩が住むといわれる霊地清涼山の麓の石橋で、狂言師の右近と左近が手獅子を持って現れ、石橋の由来や、文殊菩薩の使いである霊獣の獅子が仔獅子を谷底へ蹴落とし、自力で這い上がってきた子だけを育てるという故事を踊って見せます。やがて満開の牡丹の花に戯れ遊び、親獅子の精と仔獅子の精が現れると…。
能の「石橋」をもとにした長唄の人気舞踊で、前半は厳しくも温かい親獅子の情愛や試練を乗り越えた喜びを分かち合う様子が描かれ、後半は獅子の親子が披露する勇壮で華麗な毛振りがみどころです。襲名披露狂言として、團十郎が親獅子を、新之助が初役で仔獅子を勤め、歌舞伎舞踊屈指の代表作を親子で披露します。
狂言師右近後に親獅子の精 |
海老蔵改め團十郎 |
狂言師左近後に仔獅子の精 |
初舞台新之助 |
僧蓮念 |
幸四郎 |
僧遍念 |
鴈治郎 |