演目と配役
近松門左衛門 作
一、八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし)
嫗山姥
かつては傾城であり、今は傾城の恋文の代筆をして歩く荻野屋八重桐は、通りがかった館の前で、自分の夫であった坂田蔵人時行の歌を耳にします。館に招き入れられた八重桐が見たのは、人々のなかにいる煙草屋姿の時行でした。乞われるまま八重桐は、時行にあてつけるように廓での痴話喧嘩の様子を語ります。やがて親の敵討ちのために家を出たのだと明かす時行に、八重桐はその敵は時行の妹が討ったと伝えます。これを恥じた時行が申し訳のため切腹をすると、その魂が八重桐の体内に宿り…。大力無双の身体となった八重桐は沢瀉姫を奪いに来た太田十郎たちを難なく蹴散らします。
近松門左衛門による「しゃべり」と呼ばれる女方のひとり語りが眼目の義太夫狂言をご堪能ください。
荻野屋八重桐 |
孝太郎 |
白菊 |
壱太郎 |
太田十郎 |
虎之介 |
沢瀉姫 |
千之助 |
腰元お歌 |
亀 鶴 |
煙草屋源七実は坂田蔵人時行 |
幸四郎 |
井上ひさし 作「手鎖心中」より
小幡欣治 脚本・演出
大場正昭 演出
二、浮かれ心中(うかれしんじゅう)
中村勘九郎ちゅう乗り相勤め申し候
大店伊勢屋の若旦那の栄次郎は、戯作者になろうと決意し、世間の注目を集めようと悪戦苦闘しています。今日も話題づくりのために、番頭の吾平の心配をよそに、自ら親に申し出て勘当を受け、顔を見たこともない長屋の娘おすずと婚礼を挙げることとなります。仲人役の太助が来ないので大騒ぎとなりますが、無事におすずと夫婦になった栄次郎。しかし自らの書き下ろした絵草紙が評判にならず、尚も吉原の花魁の帚木を身請けしたり、手鎖の刑を受けようと役人の佐野準之助に頼み込んだりする始末。そんな栄次郎の様子を見て、父の太右衛門は呆れるばかり。栄次郎は帚木と心中をし、さらなる話題づくりを狙いますが…。
井上ひさしの直木賞受賞作「手鎖心中」を歌舞伎化した作品で、ネズミに乗った“ちゅう乗り”もみどころの、笑いにあふれた舞台をお楽しみください。
栄次郎 |
勘九郎 |
おすず/三浦屋帚木 |
七之助 |
太助 |
幸四郎 |
佐野準之助 |
亀 鶴 |
大工清六 |
隼 人 |
真間屋東兵衛 |
松之助 |
遣手お辰 |
竹三郎 |
番頭吾平 |
扇 雀 |
伊勢屋太右衛門 |
鴈治郎 |
近松門左衛門 作
村井富男 脚色
大場正昭 演出
一、堀川波の鼓(ほりかわなみのつづみ)
ここは京都堀川。小倉彦九郎は、殿の参勤交代に付き添い、隔年の江戸詰めを余儀なくされていました。そんな離れている時間の多い夫を妻お種はとても恋しく思っています。お種は、実の弟文六にこのほど鼓を習わせていました。彦九郎が不在のなか、お種は鼓の師匠である宮地源右衛門とふとしたきっかけで関係を結んでしまいます。その噂が広く知れ渡ってしまい、彦九郎の妹おゆらや、お種の妹お藤らがなんとかしようとお種のために腐心しますがうまくいかず、結局お種は自害を考えます。最後は一目彦九郎に会ってからと帰りを待ち、命を絶ってしまいます。彦九郎は愛おしい妻に羽織を着せかけ、忍び泣くのでした。
現代にも通じる二人の人間像、夫婦の愛の物語を描く、近松門左衛門の世話物をご堪能ください。
小倉彦九郎 |
仁左衛門 |
おゆら |
孝太郎 |
宮地源右衛門 |
勘九郎 |
お藤 |
壱太郎 |
文六 |
千之助 |
角蔵 |
寿治郎 |
浄心寺の僧覚念 |
松之助 |
磯部床右衛門 |
亀 鶴 |
お種 |
扇 雀 |
小幡欣治 作
大場正昭 演出
二、祇園恋づくし(ぎおんこいづくし)
中村鴈治郎
二役早替りにて相勤め申し候
松本幸四郎
京都三条で茶道具屋を営む大津屋に、江戸の指物師留五郎が泊まっています。留五郎は、大津屋の主人次郎八が若い頃、江戸で世話になった人の息子で、祇園祭が近いので滞在していますが、言葉も分からない京になじめず、居心地が悪いので江戸へ帰ろうとします。ところが、妻おつぎから次郎八が浮気をしているかもしれないので調べてほしいと頼まれ、留五郎は京にとどまることにします。次郎八はおつぎの推測通り、ひいきの芸妓染香に熱を上げています。しかし、どうにもうまくいかない様子。山鉾巡行の当日、次郎八と留五郎は持丸屋太兵衛に鴨川の床へ招かれ…。
祇園祭を背景に、京と江戸の意地の張り合い、恋愛模様を早替りの趣向とともに明るく描いた作品です。
大津屋次郎八/女房おつぎ |
鴈治郎 |
持丸屋太兵衛 |
勘九郎 |
持丸屋女房おげん |
壱太郎 |
おつぎ妹おその |
虎之介 |
手代文七 |
隼 人 |
岩本楼女将お筆 |
七之助 |
指物師留五郎/芸妓染香 |
幸四郎 |