演目と配役
一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
忠義のはざまに揺れ動く人々の心
寺子屋を営む武部源蔵は、恩義ある菅丞相の子・菅秀才を我が子と偽り匿っています。しかし、そのことが敵方に知られてしまい、苦悩の末、寺入りしたばかりの子どもの首を身代わりにして差し出すことを決意します。首の検分役は、菅秀才の顔を知っている松王丸。その首をあらためた松王丸は…。
歌舞伎三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑』より、松王丸と千代、源蔵と戸浪、2組の夫婦の忠義と悲劇が色濃く描かれた「寺子屋」の名場面。緊迫感のある展開が続き、時代を超えて人々の胸を打つ不朽の傑作をご堪能ください。
松王丸 |
菊之助 |
武部源蔵 |
愛之助 |
戸浪 |
新 悟 |
千代 |
梅 枝 |
園生の前 |
東 蔵 |
四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言
二、傾城道成寺(けいせいどうじょうじ)
遊女の燃えるような恋の執着
紀伊国の古刹、道成寺。白無垢姿の傾城清川が忽然と現れると、僧の安珍と出会います。安珍は実は平維盛の世を忍ぶ仮の姿で、二人はかつての恋人同士。清川は恋の妄執に苦しむと…。
紀州道成寺に伝わる安珍と清姫の伝説をもとにした「道成寺物」のなかでも、『京鹿子娘道成寺』とは異なり、清姫の霊が傾城として登場する趣向の作品です。数々の「道成寺物」を手がけた四世雀右衛門の十三回忌追善狂言として、所縁の出演者で名女方を偲びます。古風で雅やかな舞踊をお楽しみください。
傾城清川 |
雀右衛門 |
安珍 |
松 緑 |
妙碩 |
友右衛門 |
尊秀 |
菊五郎 |
真山青果 作
真山美保 演出
元禄忠臣蔵
三、御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
緊迫感みなぎる男二人の問答
江戸城松の廊下での刃傷事件から1年。次期将軍と目される徳川綱豊の別邸・御浜御殿では、今年も盛大にお浜遊びが行われています。政事には関心がないかのように振る舞う綱豊ですが、内心では浅野家の処遇について葛藤しています。そんな折、主君浅野内匠頭の仇である吉良上野介の動向を探る赤穂浪士、富森助右衛門が御浜御殿へやって来て…。
新歌舞伎の名作『元禄忠臣蔵』は、史実に基づいた新たな視点で「忠臣蔵」を描いた、真山青果の代表作の一つです。昭和15(1940)年に初演された本作は、後に六代将軍・家宣となる聡明な綱豊と、気骨ある助右衛門によるせりふの応酬を通して、骨太な人間ドラマを魅せる人気の場面。華やかさと緊迫感みなぎる名作をご期待ください。
徳川綱豊卿 |
仁左衛門 |
富森助右衛門 |
幸四郎 |
中臈お喜世 |
梅 枝 |
御祐筆江島 |
孝太郎 |
新井勘解由 |
歌 六 |
通し狂言
一、伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)
相の山
宿屋
追駈け
地蔵前
二見ヶ浦
太々講
油屋
奥庭
賑やかな伊勢を舞台に妖刀が光る
伊勢神宮の神職である御師の福岡貢は、御家横領の画策に巻き込まれたかつての主筋、今田万次郎が紛失した名刀・青江下坂とその鑑定書の折紙の詮議に奔走します。貢と万次郎は、思いがけず二見ヶ浦で、万次郎を陥れようとする悪の一味の密書を手に入れます。そんななか、貢の養子先である御師の福岡孫太夫の屋敷では、正直正太夫が太々講(だいだいこう)の奉納金100両を盗んだ罪を、貢になすりつけようとしています。しかし、貢の探し求める青江下坂を持参した叔母のおみねがやって来たことで正太夫の計略が暴かれると、刀を受け取った貢は深い仲の遊女お紺とともに、古市の遊廓油屋にいる万次郎のもとへ急ぎますが…。
江戸時代に実際に起きた事件を題材とした本作は、伊勢の観光地を随所に盛り込んだ趣向で、名刀と折紙を巡り、手に汗握る展開が繰り広げられます。このたびは、万次郎が名刀・青江下坂と折紙を紛失する物語の発端を描く「相の山」から上演し、貢が万次郎と対面する「宿屋」、悪事の証拠となる密書を巡る「追駈け」「地蔵前」と、伊勢の名所の夫婦岩を背景とした「二見ヶ浦」の場面を上演。喜劇的な場面であり、青江下坂の因縁が明かされる「太々講」と続き、ご存知「油屋」「奥庭」までを通し上演いたします。歌舞伎座での通し上演は、昭和37(1962)年以来、実に62年ぶり。柔らかさのなかにも芯の強さをもつ役柄“ぴんとこな”の典型とされる貢と、柔弱な色男の“つっころばし”の万次郎の対照的な姿、貢を助ける料理人喜助、本心を隠したお紺の愛想尽かし、奥庭での殺しの場面など歌舞伎ならではの様式美にあふれる人気作をお楽しみください。
福岡貢 |
幸四郎 |
今田万次郎 |
菊之助 |
料理人喜助 |
愛之助 |
正直正太夫 |
彦三郎 |
叔母おみね |
高麗蔵 |
油屋お鹿 |
彌十郎 |
藤浪左膳 |
又五郎 |
油屋お紺 |
雀右衛門 |
仲居万野 |
魁 春 |
軽妙な味わいの華やかな舞踊
桜の花が咲き乱れる京の東山。高僧と名高い喜撰法師が桜の枝を肩に担いで、ほろ酔い気分でやってきます。そこを通りかかった祇園の茶汲み女お梶の美しさに見惚れた喜撰法師は…。
「六歌仙」とは「古今和歌集」の撰者、紀貫之が挙げた優れた歌人のこと。その六人を題材とした『六歌仙容彩』のうち、名僧と茶汲み女の色事を軽妙洒脱に描いたユーモラスな舞踊です。洒落っ気あふれるひと幕をご覧ください。