演目と配役
美しく愛らしい雛人形たちの舞い
心躍る桃の節句。華やかに飾り付けられた雛壇は、目の覚めるような美しさ。女雛、男雛をはじめ、左大臣、右大臣、そして官女、五人囃子の人形が動き出し、なんとも雅やかに舞い始めます。しかし、暁の鐘が鳴ると…。
雛人形たちに魂が入り、ユーモアあふれる趣向で優雅に舞う、弥生興行の幕開けにふさわしい舞踊劇をご覧いただきます。
女 雛 |
福 助 |
男 雛 |
芝 翫 |
左大臣 |
彌十郎 |
右大臣 |
東 蔵 |
通し狂言
二、新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)
花見
詮議
広間
合腹
豪華絢爛たる義太夫狂言の名作
〈花見〉
春爛漫の京、新清水。花見に訪れた幸崎伊賀守の息女、薄雪姫と、刀を奉納に来た園部兵衛の子息、左衛門は、薄雪姫に仕える腰元の籬と、左衛門の奴妻平のとりなしで恋仲となります。一方、天下を狙う秋月大膳は団九郎に命じ、左衛門が奉納した刀に国家調伏のやすり目を入れさせ、左衛門と薄雪姫に謀反の疑いをかけて幸崎、園部両家を陥れようと謀ります。
〈詮議〉
謀反の罪に問われる左衛門と薄雪姫の詮議のため、葛城民部らが幸崎邸を訪れます。今回の件が秋月大膳の陰謀であると察知した執権の民部は、伊賀守と兵衛の願いを聞き入れ、それぞれ互いの子を預かって詮議するようにと、温情ある捌きをみせるのでした。
〈広間・合腹〉
薄雪姫を預かる兵衛は、姫の身を案じて館から落ち延びさせます。その矢先、伊賀守の使者がやって来て、左衛門は自らの罪を認めたので、伊賀守が清水寺に奉納した件の刀でその首を打った旨を伝え、姫の首も同じ刀で打つようにと告げます。まもなく、首桶を携えた伊賀守が来訪。先程の報せを聞き、姫の首を打つと応えた兵衛も、首桶を手に伊賀守を迎えます。しかし、二人が首桶を開けると、そのなかにあったのは…。
若い男女が陰謀に巻き込まれたことを発端として、我が子のために命懸けで立ち向かう父親の姿を描く、華やかさのなかにも憂いを帯びた作品です。歌舞伎の醍醐味が凝縮された義太夫狂言の名作を、大顔合わせで上演します。
幸崎伊賀守 |
吉右衛門 |
葛城民部 |
梅 玉 |
秋月大膳 |
歌 六 |
腰元籬 |
扇 雀 |
奴妻平 |
芝 翫 |
薄雪姫 |
孝太郎 |
園部左衛門 |
幸四郎 |
刎川兵蔵 |
錦之助 |
団九郎 |
又五郎 |
松ヶ枝 |
雀右衛門 |
梅の方 |
魁 春 |
園部兵衛 |
仁左衛門 |
一、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
智勇兼備の名将が刀に込めた密かな決意
梶原平三景時ら平家方の武将たちが参詣する鎌倉の鶴ヶ岡八幡宮。そこへ、源氏方の六郎太夫と娘の梢が、刀を売りにやって来ます。刀の目利きを頼まれた景時は、稀代の名刀であると鑑定しますが、その斬れ味を試すため、二人の罪人を重ねて斬る「二つ胴」を行うことに。ところが試し斬りに必要な死罪の囚人が一人足りず、金の工面をしたい六郎太夫が自ら志願します。試し斬りを請け負った梶原は、一気に刀を振り下ろしますが…。
景時の颯爽とした勇姿や情味が描かれる、晴れやかなひと幕。歌舞伎の様式美に富んだ時代物の名作にご期待ください。
梶原平三景時 |
白鸚 |
俣野五郎 |
錦之助 |
梢 |
高麗蔵 |
青貝師六郎太夫 |
錦吾 |
大庭三郎 |
芝翫 |
春らしさ漂う、軽妙洒脱な舞踊劇
桜が咲き誇る京の嵯峨野。次郎冠者は、主人の大名某と太郎冠者とともに花見に出かけます。大名から高坏を買ってくるように命じられた次郎冠者ですが、高坏がどんなものかを知りません。すると、そこへやってきた高足売に騙されて、高足を高坏と思い込んで買ってしまい…。
酒に酔った次郎冠者が、タップダンスのように下駄を踏み鳴らす場面は、演者の技量が求められるみどころです。明るく、おかしみあふれる舞台をお楽しみください。
義理と情愛の狭間、生き別れた親子の悲しき再会
東海道を旅する呉服屋十兵衛は、沼津のはずれで出会った雲助の平作から頼み込まれ、荷物を持たせます。しかし、年老いた平作の足取りはおぼつかず、挙げ句には怪我を負うので、十兵衛が印籠の妙薬で手当てをします。先を急ぐ十兵衛でしたが、平作の娘お米に一目惚れすると、平作の家に立ち寄ることに。その夜、お米が印籠を盗もうとしたことから、十兵衛は驚くべき事実に気づき…。
前半の喜劇的で朗らかな旅の雰囲気が、後に明らかになる親子の悲しい運命をいっそう引き立たせます。仇討ちに巻き込まれた庶民の悲哀と人情が時代を超えて胸を打つ、義太夫狂言の名作をご堪能ください。
呉服屋十兵衛 |
幸四郎 |
平作娘お米 |
孝太郎 |
池添孫八 |
彌十郎 |
雲助平作 |
白 鸚 |