演目と配役
一、御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)
加賀国安宅の関の場
大らかで豪快な、もう一つの勧進帳
兄頼朝と不和になり、都を落ち行く源義経は、武蔵坊弁慶ら家来とともに山伏に姿を変えて奥州平泉を目指します。その道中、一行は加賀国安宅の関で関守の富樫左衛門と斎藤次祐家らの詮議を受けます。主君を命懸けで守ろうとする弁慶の忠義心に心打たれた富樫は、義経一行と見破りながらも通過を許しますが、斎藤次の疑いは晴れず…。
弁慶が番卒の首を次々と天水桶に投げ込み、金剛杖で芋を洗うような動きを見せることから、通称「芋洗い勧進帳」とも呼ばれる豪快な荒事のひと幕。歌舞伎十八番の『勧進帳』より以前につくられた作品で、怪力無双の弁慶が稚気に富んだ泣き姿を見せるなど、古風で大らかな江戸歌舞伎の味わいあふれる舞台にご期待ください。
武蔵坊弁慶 |
芝 翫 |
富樫左衛門 |
鴈治郎 |
斎藤次祐家 |
亀 鶴 |
駿河次郎 |
歌 昇 |
近江三郎 |
男 寅 |
山城四郎 |
歌之助 |
出羽運藤太 |
吉之丞 |
新庄鈍藤太 |
松 江 |
常陸坊海尊 |
桂 三 |
源義経 |
雀右衛門 |
夕涼みを楽しむ老夫婦の姿に、ひとときの安らぎを
ここは田舎の百姓家。旧盆の夕暮れ、軒先には美しい夕顔の花が咲いています。夕顔棚の下では、湯上がりの夕涼みを楽しむ爺。風呂から上がってきた婆と二人で酒を酌み交わしていると、そこへ盆踊りの唄が聞こえてきます。この数年、世の中が落ち着かず盆踊りが催されるのは久しぶりのこと。その唄に耳を傾けるうち、二人は昔を思い出し…。
のどかな田舎の風景のなか、夕涼みを楽しむ老夫婦を情感豊かに描いた秀作。昭和26(1951)年に歌舞伎座で初演された清元の舞踊で、若き日を懐かしむ二人の姿が、温かくユーモラスに描かれます。心に寄り添い、詩情あふれるひと幕をご堪能ください。
婆 |
菊五郎 |
里の男 |
巳之助 |
里の女 |
米 吉 |
爺 |
左團次 |
四世鶴屋南北 作
郡司正勝 補綴
桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)
下の巻
退廃的で残酷な美の世界
高僧であった清玄は、吉田家の息女・桜姫との不義の相手として濡れ衣を着せられ、寺を追われてしまいます。かつて愛した稚児・白菊丸の生まれ変わりである桜姫への執念を抱き続ける清玄は、今は病み衰え、弟子であった残月と桜姫の局であった長浦のいる庵室に身を寄せています。しかし、残月と長浦は、金欲しさに清玄を殺すと、墓穴掘りとなった権助に後始末を依頼。そんななか、女郎として売りに出された桜姫が連れて来られ、桜姫と権助が再会するのでした。一方で雷が落ちた衝撃から、清玄は息を吹き返し…。
清玄と釣鐘権助、白菊丸と桜姫の役を、実に36年ぶりとなる人気の配役で上演し大きな話題となった4月公演の「上の巻」に続き、当月は「下の巻」として上演。「大南北」と称される四世鶴屋南北が得意とする退廃的で残酷な美の世界、南北の鬼才が余すことなく発揮される名作です。清玄の桜姫への妄執、桜姫と権助の再会、清玄の蘇生など息もつかせぬ展開が続き、下級娼婦となった桜姫の悪婆さながらのせりふとお姫様の言葉遣いが入り混じったせりふは聞きどころ。愛欲のために流転していく三人の運命にご期待ください。
清玄/釣鐘権助 |
仁左衛門 |
粟津七郎 |
錦之助 |
葛飾のお十 |
孝太郎 |
奴軍助 |
中村福之助 |
吉田松若 |
千之助 |
局長浦 |
吉 弥 |
役僧残月 |
歌 六 |
桜姫 |
玉三郎 |
名匠が彫り上げた人形が動き出す、ユーモアあふれる舞踊劇
京都の廓で見初めた小車太夫のことが忘れられない彫工の名人、左甚五郎。太夫に生き写しの人形を彫り、家の中に飾っています。ある日、人形相手に酒宴を始めると、不思議なことに人形が動き出すではありませんか。しかし、精魂込めた甚五郎の魂が宿っているため、仕草は男性そのもの。そこで廓で拾った太夫の鏡を人形の懐に入れてみると、たちまち女性らしい仕草となります。喜んだ甚五郎は人形を相手に踊り出しますが…。
日光東照宮の眠り猫の作者として有名な左甚五郎を主人公にした舞踊劇。前半は人形の精が男性の仕草と艶やかな傾城を踊り分ける変わり目が楽しく、後半は一転、甚五郎が大工道具を用いた粋な立廻りを披露します。ユニークな趣向の華やかな舞台をお楽しみください。
左甚五郎 |
白 鸚 |
京人形の精 |
染五郎 |
奴照平 |
廣太郎 |
井筒姫 |
玉太郎 |
栗山大蔵 |
錦 吾 |
女房おとく |
高麗蔵 |
日蓮聖人降誕八百年記念
横内謙介 構成・脚本・演出
市川猿之助 演出
二、日蓮(にちれん)
強い信念のもと、人々の幸せを願う日蓮の志
戦乱が続き、天災が相次いだ鎌倉時代。飢餓や疫病も流行り、世相は混乱を極めています。夜更けの比叡山では、古いお堂の前に修行僧たちが集まっています。蓮長がこもってすでに10日、飲まず食わずでついに読経の声も途絶えました。強硬な姿勢を貫く蓮長に反発心を抱く周囲の僧たちをよそに、蓮長の熱い情熱に突き動かされた成弁がその身を案じて扉を壊し、お堂の中へと踏み込むと…。
多くの人々が救われぬ世に疑問を抱く蓮長は、自らの内なる声と向き合います。幾多の困難に見舞われながらも、今を生きることの大切さを説く法華経を弘めるため、強い信念のもと蓮長から日蓮へと名を改め、人々の幸せを願います。このたびは、日蓮聖人降誕八百年を記念しての上演です。希望の光を照らし、その思いの力が心に響く舞台にご期待ください。
蓮長後に日蓮 |
猿之助 |
成弁後に日昭 |
隼 人 |
善日丸 |
市川右近 |
道善房 |
寿 猿 |
賤女おどろ |
笑三郎 |
日蓮母梅菊 |
笑 也 |
阿修羅天 |
猿 弥 |
伝教大師最澄 |
門之助 |